外来生物とは、本来の分布域ではない地域に人為的に導入された生物のことである。本書は、種生物学会所属の研究者が、外来生物の進化の実態とその対策法について、生物学や農学、環境工学などの多角的な見地から言及している論文集である。各論文末には引用文献が紹介されており、巻末には生物名索引と事項索引が付されている。第1部で外来生物の定義と概要の説明があり、第2部と第3部では、河原の外来植物シナダレスズメガヤ、セイヨウタンポポ、湖沼のオオクチバス、ペットとして持ち込まれた外国産のクワガタムシやカブトムシ、農業用生物資材のセイヨウオオマルハナバチ、青果物等の輸入品に付着して侵入した昆虫類、アメリカオオアカウキクサに代表される外来アゾラ、外来寄生生物のダニやカビなどの具体的な事例について取り上げている。これらの外来種が日本の自然界に定着することによる、農作物への被害、在来種と外来種の雑種の発生、生存競争で在来種を脅かすことによる生態系崩壊の懸念なども報告されている。また、外来種が侵入先で生存するために急速な進化を遂げる例を、アキノエノコログサで説明している。逆に日本が輸出した外来種として、イタドリやクズ、フジ、ススキも登場している。第4部では、外来生物の分布拡大予報や、外来生物法と外来種対策についての今後の見通しを解説している。