百貨店が誕生した明治後期から、百貨店業の基盤が整った昭和戦前期までの百貨店経営史をまとめた資料で、大手百貨店7店の経営者と経営組織、その営業展開に重点を置いて解説している。巻末には、人名と事項の索引および図表一覧のほか、「百貨店業研究文献一覧」が150ページ以上に渡って収載されている。この文献一覧では、明治から現代までの関連文献について、本書が対象とする百貨店、その他の百貨店、昭和戦前期、昭和戦後以降、関連する諸分野の参考文献といった五つのパートに分けて紹介している。第1部「呉服店の百貨店化と経営革新」では、明治期の三越百貨店創業を皮切りに松坂屋、高島屋、大丸など東京と大阪の老舗呉服店が百貨店に転身し、株式会社として多店舗体制を確立していく過程を論じている。第2部「ターミナルデパートの誕生と日本百貨店業の成立」では、昭和に入って新興の百貨店が台頭する様子を解説している。電鉄会社を母体とする電鉄系百貨店の鉄道網を利用した営業展開については阪急百貨店を、新興呉服店の百貨店化については伊勢丹を例に挙げている。地方都市の百貨店の勃興については、福岡の岩田屋を中心に述べている。文中には、各百貨店の売上高の推移や当時の組織図、都市別の百貨店一覧などの図表が多用されており、巻末の図表一覧で検索することができる。